適切な照明の選び方



当たっているようで当たっていない?
前回に「光阻害」についての記事を書き、多くの方々から反響を頂きました。
その中でスポットLEDを差別化している傾向にあるとのご指摘を受けました。
確かに「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」的な見方があったのかも知れませんが、私はスポットがダメだなんて
一言も書いておりません。
レンズ角が鋭い分、「中心と外側の照度差が大きいですよ」というご注意を促しただけです。
要は照射範囲が狭いので使う場合には多灯が必要という事を言いたかったのです。
※ 10000luxラインは大凡の目安として書いています。

例えば30cmキューブの場合だと1つあれば十分照らせると思います。
ただこれは照らせるだけであって、本当に十分な照度で隅々まで照らせているかと言うと答えはノーです。
近頃は照度計を持っていなくてもスマホアプリで簡単に入手出来ますので、気になる方は水槽の中央と端
を測ってみてください。
1灯であれば間違いなく照度差が生じているはずです。
メーカーの公称値に書かれているのは中心の照度ですので10センチずれればおよそ半減します。
30cmキューブといえども中央と端では15cmありますので1灯だと万遍無く当たっているように見えますが
全く照度の違う光になっていることになります。
このようにセンチ刻みで照度が違えばサンゴだってストレスを徐々に感じ始め、次第に弱ってきます。
これがスポットLEDの盲点になっている所ですのでこれを解消するためには複数多灯してある程度均一
な照度を確保する必要があります。

また、システムLEDにおいても同様の事が言えますので小さな灯具や60度レンズなどであればほぼスポット
LEDと同じような考え方を持つべきだと思います。
変更できるのであれば90度前後のレンズにするか、もしくは直下だけにサンゴを置くようなレイアウトにすれ
ば問題ないと思います。


具体的な例を上げると、スポットLEDライトの代表格であるGrassyLedioRS122は21Wタイプでありながら
中心照度は離隔30cmでおよそ30000~46000luxをたたき出すスグレモノですが、PPFD(光合成光量子
束密度)を図解で見るといかに中心照度だけが突出しているかが分かります。

ボルクスジャパン 公式サイトより抜粋
離隔30cmの図を見ると、中心から10cm外れただけで半減していることがわかります。
そして15cm外れれば値は0になっています。
これだけ照度差が激しければ繊細なSPSなどはストレスに耐え切れなくなるのは当然の事だと思います。
ですので何度も言いますがスポットLEDの場合は離隔をおいて複数で多灯して均一な照度を作る事が
重要なポイントとなります。
一方でシステムLEDライトの代表格であるAtlantikにおいては次のような結果が出ています。

Orphek公式サイトより抜粋
中心照度こそ620mol/m2/sと狭角なスポットLEDに劣るものの広範囲にわたって照度差が少なく高い
レベルを示しています。
離隔60cmでは高い値ではありませんが中心との照度差は更に小さくなっています。

スポットLEDライトでAtlantikと同じぐらいの照度にする場合は60cmワイド水槽であればおよそ8個~
10個ほどが必要となります。
そのほかのメーカーから発売されているLEDライトでPPFDが公開されているものは次の通りです。


1.023worldより抜粋
こちらはフルスペで日本を席巻したKR93シリーズです。
非常に高いPAR値ですがメインとなるセンターサークルが55度レンズになっていますので中央が突出し
て高くなっていることが分かります。
サイドラインは75度レンズが使われてますので若干幅は出ているようですが全体としては集光にして何とか
照度を稼ぎ出してるとしか思えないのが残念です。
1W素子を多く集めているので致し方ないところでしょうか。
両サイドや奥行は一見厳しそうに見えますが図の面積が大きくなっているだけですので60センチタイプの
値とすれば頑張っていると思います。
ただ、この60cmタイプを90cm水槽に使う場合にはちょっと厳しそうですね。


1.023worldより抜粋
こちらは93シリーズよりもお安いKR90シリーズです。
全てが55度レンズ仕様になっていますので93シリーズより更に尖った感じの表になっています。
言うなればスポットLEDを並べたような感じでしょうか。
奥行あるワイドタイプの水槽にはかなり厳しそうなので60規格水槽向けの値となっています。
せめて75度かあるいは90度レンズを使えば照度は落ちますが水槽全面に使え、LPSや陰日性サンゴ
向けにちょうど良さそうな感じがします。
ちょっと欲張りすぎた感じは否めません。

SANRISE公式サイトより抜粋
こちらは弊社が取り扱っているSANRISEのAqua SunRise600の表となっています。
これまで出てきた中では非常に緩やかなPPFDの値となっています。
これは120度レンズで計測したものですのであくまでも参考値としてお考え下さい。
現在弊社で扱っているものは全て90度レンズ仕様になっていますが残念なことに90度での計測値は
公表されていません。
聞いた話だけですが、90度レンズの場合は中央が120度のおよそ1.5倍ほどになっているそうですので、
この情報を信じるとおよそ450mol/m2/sくらいになる計算ですね。
しかしこの表を見るとLEDライトとはとても思えず、まるでT5ライトのような感じがしませんか?
T5ライトよりは遥かに中央付近は強いと思いますが、これはまさしく照度差が非常に少ない典型的な
例であるるように思います。
この場合でしたらサンゴの配置もあまり気にすることなく、高低差でレイアウトを決めることが出来ますの
でT5ライトでよく見かける盆栽レイアウト向きだと思います。
照度や波長が気になる場合にはサンゴの種類に応じてアクアナノ各種の追加をお勧めします!
ちゃっかり宣伝もさせて頂いております(笑)
他にはこんなのもあります。



上からRadion XR15w Pro/XR30w Pro/AI Hydra 各メーカー公式サイトより抜粋
これらは座標も曖昧でハッキリ言ってマンガですので参考程度に…。
80度レンズを採用されていますが表を見る限り、かなりスポット的な値になっています。
Radion XR30w Proを見ると1100と言う値になってますが、おそらくPPFDで間違いないと思うのですが
もしこれが事実だとすると波長は別として、相当凄いLEDライトだと思います。
本当に事実だったとしたららの場合ですけどね。(笑)
まとめとして、最適な照明を選ぶには公称値の最大照度だけを見るのではなく水槽サイズと思い描いて
いるレイアウトに何が必要なのかをよく考えることがポイントです。
SPS水槽の場合、間違いないのは照明直下を中心とした範囲をメインにすることです。
広く使いたい場合には複数台の設置をお勧めします。
直下から外れた場所には無理せず深場サンゴやLPSなどを配置するとバランスとれると思います。
LEDライトの特性をよく理解して、光が当たっているから大丈夫的な発想は怪我の元です。
それでもよく分からないと言う方には近日発売予定のあのLEDライトの発売をお待ちください。

実験水槽に入れ替えたスターポリプが満開になりました。

600キューブに入れていたキサンゴですが一向にポリプを出す気配がなく、先端が白っぽく白化してきた
ので、こちらも実験水槽に移しました。

すると今日半日で先端から黄色いポリプが少しずつ出始まました。
先端が少しヤバそうですが、何とか調子を上げて行きそうな感じがします。
もう少し開いてきたらべっぴん珊瑚フード牡蠣を試したいと思います。

ピンクのトサカにも復活を期待しています。
それにしてもべっぴん珊瑚漬けの水槽は、まるで魔法のような水槽になってきてましたね(笑)
